隠岐ジオパークを紹介してみる


隠岐隠岐の島町ローソク島)

隠岐ジオパークは、先日ニュースになった世界ジオパークへの登録を最終目標として、現在はその前段にあたる日本ジオパーク登録申請中です。

とは言え、どんなジオサイトがあるのかわからなければ関心を持ってもらいづらいと思うので、微力ながらここで少しずつ紹介していこうと思います。*1

隠岐ジオパークの概要

隠岐エコツーリズムを5年ほど前から実践しています。
その中で明らかになってきたのは、隠岐には学術的に価値の高い資源*2があるのですが、知らないとその凄さや価値に気づきにくいのが特徴です。

隠岐ジオパークのコンテンツも同様で、僕も含め地質の素人が見てもなかなか…と言うか普通はまったく気づかないサイトが多いです。

そこで、隠岐ジオパークではこうしたジオサイトを5つのステージに区分して素人でも理解しやすいような工夫をしています。

隠岐ジオパークの5つのStage

Stage1 大陸の時代

このStageは大陸地殻の形成と変遷を示すStageです。
時代区分としては、古生代から漸新世までを含み、この頃の隠岐はまだ大陸の一部でした。
また、同時期西南日本では大規模な花崗岩や酸性火山岩の活動が各地で起きていたとされています。

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Stage2 日本海形成の時代−湖から海へ−

このStageは大陸の縁辺が割れはじめ、それが次第に拡大し、日本海が誕生する様子を観察することができるStageです。
時代区分としては、中新世前期から中期にあたり、この頃の隠岐は大陸から離れた巨大な陸の塊の一つでした。また、ところどころに湖が形成されていたようです。
また、日本列島がユーラシア大陸から分離し始め、それに伴い日本海が形成され始める時代でもあります。

○キーワード

  • 時張山層(ときばりやま)
  • 淡水生貝化石
  • 淡水生魚類化石
Stage3 島の時代(1) −大規模なアルカリ火山岩の活動による火山島の誕生とカルデラの形成−

このStageは日本海が拡大した後、プレートが沈み込むことで深い深度でマグマが発生、上昇する過程などが観察できるStageです。
時代区分としては中新世後期にあたります。
この頃、隠岐は火山活動にともないう隆起によって大きな二つの火山島になったようです。
島前カルデラの形成などもこの時期のようです。
また、この時代に該当するジオサイトは、ローソク島(この記事のトップの写真)のように、隠岐でも有数の景勝地が含まれています。

○キーワード

Stage4 島の時代(2) −火山体の崩壊と新たな玄武岩の活動−

このStageは火山活動終息後の、火山体の急速な崩壊と海成層の堆積の始まりからやがて新たな玄武岩の活動が始まり、現在の島の形が形成されてくるStageです。
時代区分としては鮮新世から更新性中期頃までを対象としています。
また、この頃には日本各地でアルカリ玄武岩の火山活動が起きていたとされています。

○キーワード

Stage5 島の時代(3) −浸食・堆積による新しい地形の形成と人類の活動−

このStageは隠岐と本土が一度陸続きになった時期で、隠岐ではこの頃から縄文時代にかけて黒曜石の採掘が盛んになり、人の交流が盛んになった時期です。
時代区分としては更新性中期から現代までです。波食棚や海食洞が形成された時期でもあります。
また、地球規模での気候変動により海面の上下があり、更新性後期では現在より130m海面は高かったようですが、すぐ後の完新世では今より温暖な気候で海面も現在より1〜2m高かったようです。

大陸下のマントル(Stage1)

これはStage1のジオサイトの一つで、大久(おおく)と呼ばれる集落の海岸で観察できます。
下の地図の赤い点です。


上の写真にはマグマが発生してから上昇してくるまでの間の「溶け残りの岩石」が含まれていて、これが捕獲岩と呼ばれます。
写真のオリーブ色というか黄色というか、そのような色に見えるのがマントルの色だと言われています。

マグマの色がオリーブ色というのは意外な気がしませんか?何となく、赤いようなイメージが僕にはありました。

最後に

えーっと。初回なんでものすごい長文になっちゃいましたが、こんな感じで少しずつでも隠岐ジオパークの紹介ができればなーと思います。


注)文章中の各Stageの解説やジオサイトの紹介などは隠岐ジオパーク申請書を参照しています。

*1:隠岐ジオパーク申請書等を参考にしています

*2:地元ではアカデミックな資源と呼んでいます