隠岐ソバ ‐スローフードでファーストフード

ソバというものは、響きが日本的で日本を代表する食品であるように思う。

けど、ここ数年前まで僕はソバが嫌いだった。嫌いというと言いすぎか。あまり好きではなかった。自分から好んで食べるものではなかった、ということ。

実際、1年間通じて1回しか食べないなんていうことがざらだった。もちろん、その1回は年越しソバ。

そんな、ソバが好きじゃない僕だったけど、隠岐で仕事に行くようになり、隠岐ソバというものを食べることがあった。


そのときに食べた隠岐ソバがめちゃくちゃうまかった!
出汁は焼きサバから取るんだけど、これが僕にはあってたのか、何杯かおかわりまでしてしまったし。
この出汁とはまた別に特徴的なのが、隠岐ソバは麺の一本一本が短いということがある。
なぜ短いかというと、ひとつはつなぎを使わないから、ということがある。
もうひとつはトリビア的なものになるんだけど、タイトルに書いたように、スローフードなのにファーストフードだったということ。

スローフードなのにファーストフード??

まず、スローフードというのは、隠岐産のソバの実を使い、隠岐近海で取れるサバやアゴ(とびうお)から出汁を取り、薬味には地元の刻みネギに、隠岐産の岩のりを使うなど、基本的に地域で取れたものを味わいつくすものとなっていることを示している。
それがなぜ「ファーストフード」なのか。
これは伝聞なので、正確かどうかはわからないけど、たぶん確かなことだと思う。
隠岐ソバというのは、今もそうだけど昔から冠婚葬祭の場面で食べられてきたもの。
そして、隠岐では人のつながりが極めて濃く、こういう場面(特にお祝い事)では大勢が押しかけるらしい。
そうすると、食事の用意だけで大変な手間がかかっていたそうだ。当然、隠岐ソバも供されていた。いちいち、ソバを湯がいて出すのには大変な時間がかかる。
そこで、思いついた。
前日に湯がいておけば、当日はサッと湯にくぐらすだけで済むから楽だ!と。

……

そう。ファーストフードなんだよ。成り立ちを考えると。

でね、このブツブツ切れるソバがなんとも美味しいんだ。
個人的には薬味に柚子が入っていると最高。