巨大資本が運営する博物館


八景島シーパラダイスを訪問

先にも書いたように5月22日に八景島シーパラダイスを訪問した。

目的

目的は、隠岐で実施している博物館類似施設のリニューアルと、今後の運営計画に関する参考とするためです。
とは言え、さすがに単独で行ってイロイロ見せてもらい、話しを聞かせてもらえるほどのコネクションはないので、三崎の臨海実験所に務めている技官に同行していただきました。

バックヤードの様子

 八景島ではお客さまが見るオモテの華やかなところだけではなく、バックヤードも見せてもらいながらいろいろと話しを聞けた。「オモシロイ」という表現が適切かどうかは自信がないけど、さすが一流の民間が運営している施設だな、という発見があり参考になりました。

得たヒント

 先にひとつだけ紹介しておくと、塵も積もれば山となる的営業展開かなぁ。ありとあらゆるシーンでお金を落とさせることがシステムとして一連の流れに組み込まれている。これには一定の規模が必要になるんですけどね。

八景島シーパラダイスとは

さて。八景島シーパラダイスですが、たぶん知っている人の方が多いですよね。ただ、一応簡単に整理しておきます。八景島の中に広大な敷地を有し、その中に大きく3つの水族館施設が配置されています。

  • ドルフィンファンタジー
  • ふれあいラグーン
アクアミュージアム

この中でもっとも大きな施設はアクアミュージアム。ここがいわゆる「水族館」ですね。構造としては、何階あるのかわからないけど、6つ程度のゾーンにわかれてそれぞれのゾーンにあった魚類・海獣が展示されています。もちろん、淡水コーナーもありました。

バックヤードから見たイルカ。

もっとも時間を割いたのもこの施設です。
ここでは「バックヤードツアー」なども実施しているそうで、けっこう好評だそうです。

写真はバックヤードツアーの様子を写したものです。バックヤードには「予備槽」があり、そこで企画展や特別展に使用する生き物たちが飼育されていたり、液浸標本?や骨格標本などが収納されていたりします。
こうした裏側を見るツアーがプログラムとして成立しているところは興味深いけど、個人的にうまいなーと思ったのはその発想です。

バックヤードでも予備の生き物たちを飼育しないといけないので、その費用はたしかに必要です。しかしここで感じたのは、単にバックヤードツアーで金を取りたいというものではないんですね。
むしろ、飼育員の姿勢を正すというのかな。バックヤードツアーを開催して外部の人を招き入れるということは、いくらバックヤードとは言え、見られることを前提にしなければならない。
すると、予備槽の生き物たちをより丁寧に飼育するし、飼育員にもいいプレッシャーがある
、というのです。これはオモシロイです。

いくつか写真で紹介します。

ゾーンの概要を紹介するパネル。



センスがいいなーと思った解説パネル。



ワールドカップが近づいているけど、こういうタイムリーな展示方法ができる機動力も嬉しい。



このパネルの後に・・・

これ!昆布の「林」じゃなくて、「森」になってんじゃねーか!
ものすごい密度ですよ、この昆布。聞いたら、普段は5〜10株のところを今日は15株くらい入っているとか言われましたねー。魚も泳ぐところねーでやんの。



これはなぜ照明が赤いと思いますか?ここは深海魚が展示されているので、僕は単純に「深海」のイメージを赤い照明で演出したのだろう、と思ってました。
しかし実際には、魚が強い光で眼を傷めないように、なおかつ来場者が見づらくないギリギリのラインを模索した結果だそうです。
照明ひとつとっても工夫を凝らす。これが重要ですね。



これはミーハーで撮ったもの。クリオネです。はじめて実物を見たんだけど、めっちゃ小さいのね、クリオネ。驚いた。

ドルフィンファンタジー

ドルフィン・ファンタジーはその名の通り、イルカの展示施設です。アクリル水槽のトンネルをくぐると頭上をイルカたちが泳いでいる。

こんな近くでイルカが見れると、やっぱり子どもも大人も喜びますね。施設奥にはベルーガシロイルカ)もいました。

ふれあいラグーン

ふれあいラグーンもまんま、ふれあうための施設ですが、別にふれあわなくても入れます。イルカに触れたりペンギンと触れ合えたりするようですね。磯が再現されていて子どもたちが楽しそうにしていた様子も印象的。隠岐では必要ないですねー。本物の磯があるから。


ところで、八景島シーパラダイスはこれだけじゃなくて他にもレストランやホテル、アトラクションもあり、さながらテーマパークでした。
正直、「すごい資本力だな」と圧倒されました。

博物館相当施設の役割

ここ八景島シーパラダイスもそうですが、博物館相当施設として、来場者に生き物たちの生態や魅力を伝える役割がまずあります。

一方で、調査・研究も求められる役割ですが、同行してもらった技官によると、調査・研究をきちんと行えている博物館は少ないそうです。
たしかに、調査・研究ではお金を稼ぐことはできないから、そうなりがちなのかもしれないなと思います。

しかし、そういう施設が少ないのであれば逆に隠岐にとっては、ひとつのヒントであり、モデルでもあるのではないか?
つまり、隠岐では「見せる」展示もするが、きちんと隠岐諸島周辺の調査・研究活動を行い、整理し、学会や研究雑誌に報告することで存在価値を高めることができる。

日本海のそれも離島にそのような施設があれば、全国各地の博物館施設が日本海エリアの研究拠点として隠岐と連携を考えるのでは?

隠岐が目指すべき方向とは

オンリーワンかつナンバーワンを目指すことが隠岐の道ではないのか。


そうそう。最初に書いたお金を落とすことが一連のシステムとして構築されている点について、隠岐ですぐにできるかというとこれは微妙。

一つは、八景島シーパラダイスは来場者にとって「異空間」であるということが大きい。
異空間に来ているという自覚は、そこでの消費にも積極的になれる要素があるし、シーパラダイス側はもちろん、お金を落としてもらうことを目的としているので合致している。

しかし隠岐では「異空間」という印象より、島の「日常」が展開されている。
観光客は「異空間」と認識していて消費する気があっても、島の人はあくまでも「日常」で、表面的には積極的にお金を落としてもらいたいという姿勢はない。良くも悪くも、「商売人」になりきれないのだろう。

つまり、来場者(隠岐で言えば観光客)の求めるものと受け入れるシーパラダイス(隠岐)の与えたいものの不一致が起きているのだなぁ。

これを解消できればいいんだけど、そう簡単にいかないのが世の常。

だが、光がさすとしたらやはりこの方向性なんだろう。